「非整数階微積分(Fractional Calculus)」のススメ

 

はじめに

ここでは「非整数階微積分」と言うものについて紹介していきたいと思います。

 

ある程度数学に教養のある方でしたら、

 \displaystyle \frac{d^{2}}{dx^{2}}f(x)-2\frac{d}{dx}f(x)+f(x)=\sin (x)

の式にあるような、2回続けて微分を行う「2階微分」について知っていると思います。

「非整数階微積分」はこの「微積分を複数回行う操作」を一般化したものになります。

 

 

あらすじ

非整数階微積分を語るのに欠かせない「リーマン=リュービル積分」を紹介します。

続いてリーマン=リュービル積分の導き方をあげ、

最後にさまざまな数学の関数への応用についてみていきます。

 

 

リーマン=リュービル積分とは

リーマン=リュービル積分の式は下のような形をしています。

 \displaystyle _{a}I^{\lambda}_t f(t) \equiv \frac{1}{\Gamma (\lambda)} \int_a^t {(t- \tau)}^{\lambda -1} f(\tau) d\tau

この式は「関数  f(x) \lambda積分した」物になります。

 

リーマン=リュービル積分の導き方は主に二つあります。

細かい計算は長くなりますので参考資料をあげておきます。

 

1つはある積分公式から数学的帰納法によって導く方法です。

>詳しくはこちらの pdf 2.1.1 をお読み下さい。

https://www.se.fukuoka-u.ac.jp/iwayama/teach/fractional_calculus/tsuuron_fractional_deriv.pdf

 

2つめは一般化された「コーシーの積分公式」から複素解析的な計算で導く方法です。

>詳しくはこちらの pdf 11章 をお読み下さい。

https://www.researchgate.net/publication/242386925_Fractional_Derivatives_and_Special_Functions

 

 

数学関数への応用

非整数階微積分の観点からすると、

有名な数学関数が面白い内容を持っていることがわかります。

ただその前に、上にあげたリーマン=リュービル積分の式を扱いやすい形にしましょう。

 t-\tau \rightarrow \tau , \quad _{a}I^{\lambda}_t f(t)\equiv \frac{1}{\Gamma (\lambda)} \int_0^{t-a} { \tau}^{\lambda -1} f(t - \tau) d\tau

 

1. ガンマ関数

ガンマ関数の定義は

 \Gamma (z) \equiv \int_0^{\infty} t^{z-1} e^{-t} dt

ここで両辺を \Gamma (z)で割ると、

 1 = \frac{1}{\Gamma (z)} \int_0^{0-(-\infty)} t^{z -1} e^{0- t} dt =_{-\infty}I^{z}_0 e^t

となります。

 

つまりガンマ関数はその定義域に含まれる任意のzに対して、

「指数関数  e^t を t で z 回積分して  t = 0 を代入したものは 1 になる」

ことを意味しています。

 

2. ベータ関数

ベータ関数の定義は

 B(x,y) \equiv \int_0^1 t^{x-1} (1-t)^{y-1}dt

この式は B(x,y) = \frac{\Gamma(x)\Gamma(y)}{\Gamma(x+y)}を使うと、

 \int_0^1 \frac{t^{x-1}}{\Gamma (x)}\frac{(1-t)^{y-1}}{\Gamma(y)} dt = \frac{1}{\Gamma(x+y)} =\int_0^1 \frac{t^{(x+y-1)-1}}{\Gamma (x+y-1)}

 

つまりベータ関数は

区間[0,1]での数1に対する積分作用素の畳み込みの式、

 (I^{\alpha}*I^{\beta})(1)=(I^{\alpha+ \beta -1})(1)

を意味します。

 

3. ゼータ関数

ゼータ関数積分表示式は

 \zeta (s) = \frac{1}{\Gamma (s)} \int_0^{\infty} \frac{z^{s-1}}{e^z - 1} dz

 ここで指数関数の和 

 \Delta (t) \equiv \sum_{n \in N} e^{nt} = \frac{1}{e^t - 1}

を定義しておくと便利です。

 

リーマン=リュービル積分より

 _{-\infty}I_0^s (\Delta (t)) = \frac{1}{\Gamma (s)} \int_0^{0-(-\infty)} z^{s-1} \Delta(0-z) dz = \zeta (s)

 

つまり指数関数の和  \Delta (t) を s 階積分して  t = 0 を代入することで

ゼータ関数が得られることがわかります。

 

 

終わり